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アルツハイマー病と金銭管理ADEARサイト

アルツハイマー病の人は、時間の経過とともに、日常の金銭が絡む作業を成し遂げる能力や、金銭に関わるものごとを管理する能力を失います。実際、このことがアルツハイマー病の目に見える最初の徴候であったり、患者が自立して生活する能力を失いつつあることの初期の徴候であることがあります。

あなたの家族や友人が、おつりの計算、店での買い物の支払い、チップの計算、小切手の清算、銀行取引明細書の把握がうまくできなくなっていると気が付くことがあるかもしれません。未払いの請求書や、開封すらされていない請求書が本人の自宅に散らかっているのを見つけるかもしれません。また、クレジットカード請求書の新しい購入履歴や、見慣れない品物に気づくかもしれません。金銭管理の問題が増えてくるのはアルツハイマー病の早期の徴候である可能性があり、本人または家族の資産が急速に失われるおそれがあります。介護者、家族や友人はしばしば手遅れになるまでその問題に気づかなかったり、その深刻さを理解していないことがあります。

アルツハイマー病によって引き起こされる金銭管理能力の低下は、早期に起こり、また急速に悪化する可能性があることが、米国国立加齢研究所(NIA)によって一部助成を受けている研究で示唆されています。アルツハイマー病の早期においては、患者は、請求書の支払いやおつりの計算などの基本的な作業を行うことができるかもしれません。しかし、小切手帳と銀行取引明細書との照合、納税申告書の準備、または投資に関する賢明な判断を行うなどの、より複雑な作業については、困難になっている可能性があります。アルツハイマー病が進行するにつれて、これらのすべての能力は次第に失われていきますが、より複雑な作業を行う能力が最初に失われます。

詐欺から守る

主な懸念のひとつは、詐欺に遭いやすくなることです。見知らぬ人と知人の両方から騙されるおそれがあります。注意すべき詐欺には以下の種類が挙げられます:

  • 不要な害虫駆除や家の土台、屋根、煙突または私道の修理など、請負業者による詐欺
  • 悪質な訪問販売
  • 慈善金詐欺
  • 効果が示されていない治療法の売りこみなどの健康詐欺
  • 電話、電子メールおよび郵便物などによる詐欺
  • クレジットカード詐欺、または口座や暗証番号の悪用
  • 個人情報の盗難
  • 委任状の行使による財産横領
  • 財産の放棄を促す個人への脅迫

被害にあっていることを示す徴候として、以下が挙げられます:

  • 銀行預金残高、貯蓄額または投資額の突然の変化
  • 銀行口座または退職基金からの多額の引き出し
  • 支払い延滞の通知
  • 電話または公共サービスの停止
  • 身体的または情緒的虐待の徴候

これらの問題にいつどのように取り組むかということは、介護者と家族が行わなければならない最も難しい決断のひとつです。専門家たちは、深刻な問題が表面化しないうちに、早期に金銭の管理を引き受けるほうがよいという見解で一致しています。あらかじめ、できれば診断を受けた後すぐに、患者本人とともに講じておきたい措置としては、以下のものが挙げられます。

  • 金銭的な判断の委任について事前に計画を立てる
  • 財産の整理を終える
  • 金銭に関わる活動に対する監督を強める

法的な手続きを行う

人の金銭を管理するための法的権限を得る最良の方法は、財務に関する永続的委任状によってその人の同意を得ることです。この法的文書は、財産に関する意思決定が不能になった場合、管理を譲渡するという本人の理解および同意を示すものです。

法的なトラブルを回避するためには、軽度認知障害やアルツハイマー型認知症の患者本人が、この手続きについて理解し、同意する能力のある間に、この委任状に同意を得るのがよいでしょう。この委任状がなければ、患者の財産を管理する法的権限を得ることは、はるかに難しくなるでしょう。

多くの場合、アルツハイマー病患者は、自分が財産をうまく管理できているかどうか理解できません。実際には問題がある場合にも、うまくやっていると信じていることもあります。多くの人が、財産管理を、独立し自立した成人であるための資質のひとつだと考えています。多くの高齢者は、事前の取り決めには関係なく、彼らの財産を引き受けようとする試みに強く抵抗したり、非常に疑い深くなったりするでしょう。

アルツハイマー病患者に、自分は責任を持っている、自立していると感じさせるひとつの手段として、本人に少額の現金や、場合によっては無効の小切手を渡し、手元に持たせておく方法があります。クレジットカードの利用限度額は下限に設定するか、カードを解約してください。もうひとつの戦略は、介護者とアルツハイマー病の人が、財産管理のチームとして協力することです。介護者から患者に、自身が財産管理について理解しておくことが重要なので助けてほしいと持ちかけてもよいでしょう。いうまでもなく、財産に関する権限の委譲にあたっては、相手への尊敬と理解を持って行うのが最良の方法です。